最近、生成AIでアプリを作る動画をよく見る。「こんなアプリを作って」と伝えるだけで、UIも機能もバックエンドも、わずか数分で形になる。それを見ていて思うのは、「あ、もうこれ誰でも作れるようになったんだな」ということ。
昔だったら「こんなデザインを実装できるなんてすごい」「この機能を短期間で作るなんて」と言われていたものが、今や特別なスキルではなくなってしまった。UI作成もコーディングもチャットで完結する。ノーコードツールを使えば、複雑なワークフローすら自動生成できる。
つまり、技術的な差別化がほぼ意味をなさない時代になった。
ビジネスでよく「MOAT(堀)」という話が出る。競合が簡単に真似できない、参入障壁のことだ。ブランド力、特許、ネットワーク効果、規模の経済など、いろいろな種類がある。
でも、今までのMOATって「あったらいいな」程度のものだった。技術力やUI/UXの美しさ、開発スピードなど、それ自体が差別化になっていたから。
ところが、生成AIが登場して状況が一変した。
✅ 技術の差 → AIで埋まる ✅ UIの差 → AIで埋まる
✅ 開発スピード → AIで埋まる ✅ バックエンドの強さ → AIで埋まる
これらがすべて「ある程度できて当たり前」になってしまった。つまり、MOATは「あったらいいな」ではなく「ないと死ぬ」レベルの必須要素になったということ。
プロダクトを作ってる人なら、自分のアイデアやUIをコピーされたときの気持ちがわかると思う。「私たちが最初に考えたのに」「こんなに時間をかけたのに」「丸ごと真似された」って。
でも、これからの時代、真似されること自体が前提になる。怒ったり防御に回ったりするのではなく、「真似できない構造」を最初から組み込んでおくしかない。
どこでもドアって、それ自体は単なる「技術ガジェット」でしかない。もしこの技術が一般化して、誰でもどこでもドアを持てるようになったとしたら、どこでもドア自体には差別化要素はない。まさに今のAI時代の技術MOATと同じ状況だ。
でも、ドラえもんの四次元ポケットの真の価値は、どこでもドアそのものにあるわけじゃない。
本当の価値は「使い方」と「ストーリー」にある。